「登山を始めてみたいけれど、いきなり高価な装備を揃えるのは気が引ける」――そんなふうに感じている方は少なくないのではないでしょうか。実は、ファストファッションブランドのGU(ジーユー)でも、日帰りの軽登山であれば代用可能なウェアがいくつか存在します。
もちろん、すべてのアイテムが登山向きというわけではありません。登山は天候や環境の影響を大きく受けるアクティビティ。服装の選択ひとつで、快適さが損なわれたり、安全性に関わることもあるのです。
本記事では、「GUのアイテムがどの程度まで登山に使えるのか」「どんな点に注意すべきか」について丁寧に解説していきます。コストを抑えつつ、無理のない範囲で登山を楽しみたいと考えている初心者の方に向けて、安心して始められる知識をお届けします。
GUで登山って本当に大丈夫?

登山初心者にとって、最初のハードルとなるのが「装備をどう揃えるか」という問題です。特にウェアに関しては、アウトドア専門ブランドのアイテムは機能性に優れる反面、価格が高くなりがちです。そこで注目されるのが、手頃な価格とトレンドを押さえたデザインが魅力のGU。一見すると登山には不向きに思えるかもしれませんが、選び方次第では十分活用することができます。
GUの服は登山に使える?向いているのは「軽登山」

結論から言えば、GUのアイテムでも日帰りの軽登山(標高1000m前後の低山やハイキング程度)であれば、ある程度の代用が可能です。具体的には、気温や天候の安定している季節に、比較的整備された登山道を歩くようなシチュエーションに適しています。
たとえば、ポリエステル素材のTシャツや、ストレッチの効いたパンツ、薄手のフリースなどは、登山用ウェアに近い性能を持っており、快適な行動をサポートしてくれるでしょう。ただし、あくまで「街着として作られている」ことを忘れてはいけません。縫製の強度や耐久性、そして突然の天候変化への対応力は、やはり登山専用のギアには及びません。
GUを選ぶメリット|安さ・手に入りやすさ・デザイン性
GUのアイテムを登山で使う最大の利点は、やはり価格の手頃さです。登山初心者はまず道具にどれだけ投資すべきか迷いがちですが、GUであれば数千円で一通りのウェアを揃えることも可能です。
また、全国の店舗やオンラインショップで簡単に手に入る「入手のしやすさ」も魅力。急な予定でも対応しやすく、サイズ展開も豊富です。さらに、GUの服はトレンドを意識したスタイリッシュなデザインが多いため、「登山=ダサい」というイメージを払拭し、気分よく山歩きを楽しめるという心理的なメリットもあります。
とはいえ、どんなアイテムでも使えるわけではありません。次章では、GUで登山ウェアを選ぶ際の具体的なポイントについて、詳しく解説していきます。
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GUで登山ウェアを選ぶときのポイント

GUのアイテムを登山に活用する際は、「安いからこれでいいだろう」といった感覚で選ぶのは危険です。山は気温や天候が変わりやすく、快適さだけでなく安全性もウェアの選び方に大きく左右されます。ここでは、GUのウェアを登山用として選ぶ際に必ずチェックすべきポイントを解説します。
綿素材は避けよう!登山では化学繊維が基本

登山初心者が最も陥りやすい落とし穴のひとつが、「綿(コットン)素材の服を着てしまうこと」です。綿は肌触りがよく、普段着としては非常に優れた素材ですが、登山では以下の理由から不向きです。
- 汗を吸うが乾きにくいため、濡れた状態が長く続く
- 体温を奪い、汗冷えの原因になる
- 一度濡れると重くなり、動きにくくなる
そのため、登山ウェアにはポリエステルやナイロンなどの化学繊維が適しています。これらは吸汗速乾性が高く、登山中の汗ムレや体温低下を防いでくれます。GUでアイテムを選ぶ際は、素材表記をしっかり確認し、「綿100%」などの記載があるものは避けましょう。
機能性をチェック|吸汗速乾・ストレッチ性・通気性

登山では、ただ動きやすいだけでなく、汗をしっかり逃がして体温を調整してくれる機能性も非常に重要です。GUの中でも登山に向いているのは、以下のような性能を持ったアイテムです。
- 吸汗速乾性:汗を素早く吸って乾かし、汗冷えを防ぐ
- ストレッチ性:足を高く上げたり、岩場を跨ぐ際もストレスなく動ける
- 通気性:体温が上がりすぎないよう熱や湿気を逃がす
これらの機能が備わっているかどうかは、商品タグや公式サイトの商品説明で確認できます。また、「ドライ機能」「ストレッチ素材」などの表記があるアイテムを目安に選ぶとよいでしょう。
防寒着・レインウェアはGUではなく専門ブランドを

GUで代用可能なアイテムがある一方で、代用がきかない、むしろ代用してはいけないアイテムも存在します。代表的なのが以下の2つです。
- 防寒着(アウター)
- レインウェア(雨具)
これらは命を守る装備といっても過言ではありません。GUのアウターは街中での防寒には十分でも、低温・強風・急な雨といった登山特有の環境には対応できません。登山では、透湿防水性の高い素材(例:ゴアテックス)を使った専用ウェアが必要です。
初心者の方はまず、GUで揃えられるものと、そうでないものの線引きをしっかり意識しておくことが重要です。
GUで代用できる登山向きアイテム例
GUのアイテムの中には、登山専用ではないものの、軽登山やハイキングにおいて十分に活用できる製品があります。ここでは、特に登山初心者におすすめしたい3つのアイテムをピックアップし、それぞれの特長や使い方のポイントを詳しくご紹介します。
サイドシームレスクルーネックT(半袖)

まずご紹介するのは、サイドシームレスクルーネックT(半袖)。このTシャツは、名前のとおり脇に縫い目がない構造(シームレス)になっており、ザックやハーネスとの摩擦が起こりにくいのが特長です。生地にはポリエステルが多く使われており、吸汗速乾性に優れているため、登山中にかいた汗をすばやく乾かしてくれます。
また、程よいフィット感がありながらも動きやすく、トレッキング中の体の動きにしっかり対応してくれるのも魅力です。普段着としても着まわせるミニマルなデザインで、コストパフォーマンスも非常に高い一枚です。
✅ ポイント:
・「ポリエステル」素材で速乾性あり
・縫い目がないため擦れにくい
・1枚990円〜と非常に手頃
ドライストレッチジョガーパンツ

次にご紹介するのは、登山時のボトムスとして使えるドライストレッチジョガーパンツです。名前の通り、ストレッチ性のある生地を採用しており、膝の曲げ伸ばしや段差の多い登山道でもストレスのない動きが可能です。また、軽量で通気性にも優れているため、春〜秋の軽登山に非常に適しています。
裾が絞られたジョガータイプは足さばきが良く、歩行時に裾が引っかかる心配もありません。ウエストはゴムとドローコード仕様でフィット感も調整しやすく、初心者でも扱いやすいアイテムです。
✅ ポイント:
・ストレッチ性が高く動きやすい
・軽量&通気性あり
・普段着にも使えるシンプルなデザイン
ウィンドプルーフシェルパーカ

最後にご紹介するのは、ウィンドプルーフシェルパーカ。軽量で持ち運びやすく、風をしっかり防いでくれる機能性パーカです。素材にはポリエステルを使用し、裏地がメッシュ構造になっているため、蒸れを軽減しつつも保温性をある程度確保できます。
登山中は風によって体温が奪われる「ウィンドチル効果」に注意が必要ですが、このパーカを1枚羽織ることでそれを大きく軽減できます。ただし、完全防水ではないため、本格的な雨への対応は難しく、レインウェアの代わりにはなりません。あくまで「風よけ」として活用しましょう。
✅ ポイント:
・防風性ありで風が強い稜線などでも活躍
・軽量で携帯しやすい
・裏地メッシュで蒸れにくい構造
これらのGUアイテムは、登山専用ブランドの製品に比べると機能面では限定的ではありますが、条件さえ合えば、十分に代用可能なレベルに達しています。ただし、天候が不安定な日や標高の高い山では、無理に使わず専用装備を選ぶことをおすすめします。
GUアイテムを使う際の注意点
GUのアイテムは、価格の手頃さとデザイン性から、登山初心者にとって心強い味方となります。しかし、登山というアクティビティは、自然環境の変化や予測できないリスクに直面することも多く、ウェアの選択が安全性に直結するケースも少なくありません。
ここでは、GUのウェアを登山に取り入れるうえで、必ず押さえておきたい注意点を解説します。
天候が崩れる山では使わないほうが安全

GUのアイテムは基本的に「街着」を前提に作られているため、耐久性や防水性、透湿性といった登山特有の過酷な環境への対応力は限定的です。特に、天候が崩れる可能性のある山行では、GUのウェアでは対応しきれず、体力・体温を著しく消耗するリスクがあります。
登山では「最悪の状況を想定した装備選び」が基本です。少しでも雨や風が予想される場合は、無理にGUで済ませようとせず、アウトドアブランドのレインウェアやシェルジャケットを携行することが鉄則です。
⚠️ 注意:山の天気は変わりやすく、晴れていても急に崩れることがあります。
汗冷え・雨・風への対策は専門ウェアと組み合わせて

GUのTシャツやジョガーパンツは、吸汗速乾やストレッチ性といった機能を持つものもありますが、それでも極端な発汗や濡れには対応しきれない場合があります。とくに「汗冷え」は登山中の体力低下や体温低下の原因となり、命に関わることも。
そのため、GUのウェアを使う際は、ベースレイヤーやレインウェア、防寒着はアウトドア専用品と組み合わせるのが理想です。例えば:
- インナー:登山用のメリノウールや化繊インナー
- 中間着:GUのフリースやウィンドパーカ
- アウター:防風・防水性のある登山用ジャケット
というように、部分的にGUを使いつつ、要所は専門ブランドで補う「ハイブリッド装備」が現実的かつ安全です。
あくまで「日帰り&低山」のみに使う前提で

GUのアイテムが登山に使えるとはいえ、それはあくまで条件付きです。基本的には以下のような状況に限定して使用することをおすすめします。
- 標高1,000m以下の低山
- 天候が安定している日
- 日帰り(山中泊なし)
- 登山道が整備されているコース
これらの条件を外れるような中・上級者向けの登山(縦走・残雪期・テント泊など)では、GUのアイテムは適しません。「登山らしいことをしてみたい」程度の気軽な山歩きに限って使うのが、安全な付き合い方と言えるでしょう。
まとめ|GUはあくまで“補助的”に使おう
登山をこれから始めたいという初心者にとって、装備選びは大きな悩みの種です。高価な専門ブランドのウェアをいきなり一式揃えるのは、金銭的にも心理的にもハードルが高いもの。その点、GUのアイテムは手に取りやすい価格とスタイリッシュなデザインで、登山入門の“はじめの一歩”として非常に魅力的です。
本格的な登山には向かないけど、気軽な山歩きならOK

本記事でご紹介したとおり、GUのウェアは日帰りかつ低山で、天候が安定している日に限定すれば、代用品として十分活躍してくれます。ただし、耐久性や防水性、保温性といった「登山専用ウェアの持つ性能」はGUには備わっていません。したがって、本格的な登山や悪天候下での山行には不向きであり、使用は避けるべきです。
また、山の天気や地形の変化は予測が難しく、少しの油断がトラブルにつながるリスクもあります。そうした環境下では、やはり登山用に設計された専用装備の信頼性に勝るものはありません。
「安く揃えたい初心者」にとってはいいスタートになる
とはいえ、「登山を始めたい」「まずは近くの低山から試してみたい」という初心者にとって、GUは非常に良い選択肢です。予算を抑えつつ、それなりの機能性を持つアイテムでスタートできることは、登山を継続していく上でも大きなメリットです。
まずはGUで手軽に装備を揃え、実際に山を歩いてみる。そこで得た経験をもとに、「もう少し本格的な山にも挑戦してみたい」と思ったときに、徐々に専用装備を取り入れていくのが理想的なステップアップの形です。
最後に

GUを上手に活用すれば、「お金をかけずに、でも快適に」登山を始めることが可能です。ただし、“なんとなく”で選ばずに、素材や機能、登山の目的に合わせた選択をすることが、安全で楽しい登山の第一歩になります。
どうぞ、無理なく、そして楽しく。あなたの登山デビューが素晴らしいものになりますように。