『え、そんなにズレるの?』登山でGPSが信用できない本当の理由

登山中、地図アプリの現在地が道から外れて表示されていた――そんな経験はありませんか?
「GPSは正確なはず」と思っている人ほど、山でそのズレに驚くことがあります。
実は、山岳地帯ではGPSの仕組みによる“弱点”が表れやすいのです。

この記事では、登山中にGPSがズレる具体的な理由をわかりやすく解説。
どんな場面で誤差が起きやすいのか、そして安全に使うための考え方もあわせてご紹介します。

目次

GPSの仕組みをざっくり説明

GPSは、地球の上空にある人工衛星からの電波を受信し、自分の位置を計算しています。
たとえば、「この衛星からは20,000km」「あの衛星からは19,500km」といった距離情報をもとに、自分が今どこにいるのかを割り出しているのです。

この計算は、最低でも4つの衛星と通信できていることが前提です。
つまり、空が広く開けていて、複数の衛星から直接電波を受け取れる場所では高い精度が出ます。

ただし、山の中ではその条件がそろわないことも多く、ここに「ズレ」の原因が潜んでいます。

登山中にGPSがズレる3つの理由(約498文字)

① 電波が遮られる(谷・森林・岩壁)

山の中では、深い谷や密集した樹林、急な崖などに囲まれる場面が多くなります。
これらの地形は、上空から飛んでくるGPS衛星の電波を遮りやすく、必要な数の電波が届かなくなることがあります。
電波が不足すれば、位置情報の精度も当然下がってしまいます。

② マルチパス効果(反射による誤差)

崖や岩壁の近くでは、GPSの電波が壁に反射してから受信されることがあります。
この「遠回り」した電波を正しい距離として計算してしまう現象を「マルチパス」と呼びます。
反射で届いた電波は実際よりも長く感じられるため、現在地がズレて表示される原因になります。

③ 端末やアプリの精度の限界

スマートフォンに搭載されているGPSチップは、登山専用機器に比べると精度がやや低めです。
また、地図アプリの多くは「道路上の使用」を想定して設計されており、登山道のような細いルートでは正確に対応できない場合もあります。
地形図と照らし合わせて使わないと、現在地がずれたまま進んでしまうリスクがあるのです。

GPS誤差の主な原因と特徴>>>

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原因起きやすい地形影響の内容対策のヒント
電波の遮断谷・森林・急な斜面衛星数が足りず、位置情報が不安定になる開けた場所で確認する
マルチパス(反射)岩壁・断崖近く反射電波による距離の誤認岩場ではこまめに現在地を再確認
機器・アプリの限界全般精度が粗く、細い登山道に対応しきれない地形図アプリや登山専用機の活用

実際にズレが起きやすい山域(約198文字)

実際にGPSの誤差が起きやすい山域として有名なのが、奈良の大峰山系や群馬・新潟の谷川岳、そして鹿児島の屋久島・宮之浦岳などです。

大峰山系は深い谷と樹林が続くエリアで、衛星電波が届きにくくなりがちです。
谷川岳や穂高岳のような岩場では、マルチパス効果によるズレが起きやすく、宮之浦岳では密林と火山岩の影響で電波の乱れが生じやすいと言われています。

地形的な条件が重なると、数十メートル単位で位置がズレることもあります。

GPSがズレやすい代表的な山域とその特徴>>>

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山名・地域ズレやすい理由備考
大峰山系(奈良)谷が深く、樹林が密集電波が届きにくい
谷川岳(群馬・新潟)岩壁が多く、マルチパスが起きやすい崩落地帯も多く要注意
宮之浦岳(屋久島)密林と火山岩で電波が乱れやすい雨が多く、視界不良になりがち
穂高岳(長野)急峻な岩場が多く、電波反射が起きやすい地図読みの技術が必須

GPSは“参考”程度に。本当に大事なのは?

GPSは登山において強力なツールですが、「ズレることがある」という前提で使うことが大切です。
位置情報を完全に信用してしまうと、道迷いや誤ったルート選択につながる危険があります。

紙の地図とコンパスを持ち歩き、要所では現在地を自分で確認する習慣を持ちましょう。
複数の情報を組み合わせることで、安全性は格段に高まります。

まとめ

GPSは登山に欠かせない便利な道具ですが、山の中では必ずしも完璧ではありません。
谷や岩場では電波が遮られたり反射したりして、実際の位置と大きくズレてしまうこともあります。

こうした特性を理解した上で、「ズレるもの」として使う意識が重要です。
紙の地図やコンパスとあわせて使うことで、万一のトラブルにも冷静に対応できます。

自然の中では、アナログな手段こそが最後の頼りになる――そんな登山者としての基本を忘れないようにしましょう。

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この記事を書いた人

関西の山を中心に登山をしております。

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富士山、奥穂高岳、槍ヶ岳、石鎚山、剣山
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